めまいや顔面麻痺
めまいや顔面麻痺

めまいとは、平衡感覚の異常によって生じる不快な感覚で、いくつかのタイプに分類されます。代表的なものに、目がグルグル回るように感じる「回転性めまい」、立ち上がった際に目の前が暗くなり意識が遠のくような「非回転性めまい」、そして体がふわふわと浮いているように感じる「浮動性めまい」があります。立ち上がるとふらつく、頭を動かすと回転感がある、天井や周囲が揺れて見える、まっすぐ歩けない、耳鳴りや難聴を伴う、頭痛、吐き気や嘔吐を伴う、何もしていなくても浮遊感がある、片側の手足のしびれや力が入りにくい、ろれつが回らないなどが挙げられます。このように症状は多種多様ですが、詳しい問診と聴力検査、平衡機能検査、MRI検査などの画像検査で、病状の把握や病態の解明を行います。脳梗塞や脳出血などの危険なめまいを見逃さないことが大切です。
めまいを感じると脳の異常を疑い、恐怖を感じる方も多いと思います。脳出血や脳梗塞から生じるめまいの多くは「めまい」以外の症状を合併していることが特徴的です。耐え難い頭痛、意識障害、顔面麻痺やろれつが回らない、手足に力が入らない、歩けない症状があれば、急いで脳神経の専門医に診察を依頼します。ご自宅で発症した場合には一刻も早く救急隊に相談することが大切です。内耳にある三半規管や耳石器の異常によるめまいでは意識は正常で、お話することができます。症状をはっきり覚えている方も多いです。そこでめまいの問診ではいつ、どこで、何をしているときにめまいが発症したか。めまいは数秒で消失したか、数分、もしくは数時間、数日持続したかなど、お尋ねしています。めまいとともに耳のこもる感じや閉塞感、耳鳴り、難聴があるかも重要なサインです。
代表的な疾患には以下のものがあります。
最も多いめまいの疾患で、寝返りや起床時など頭の動きによって誘発されます。回転性のめまいは数秒から数十秒で治まり、難聴や耳鳴りは伴いません。内耳の耳石がはがれて半規管内を浮遊することでめまいが生じます。平衡機能検査では頭位眼振検査や頭位変換検査を実施し、目の揺れ(眼振)の向きや方向を確認します。眼振によって、耳石がどこに潜んでいるかを知ることができれば浮遊耳石置換治療の適応になります。実際に眼振を観察しながら頭位を変換し、耳石を元にあった耳石器の位置に戻してあげる治療法になります。治療後もふわふわした浮動性めまいを感じることがありますので、鎮暈薬の内服をしていただきます。
難聴、耳鳴り、耳のつまり感などの聴覚症状を伴うめまいを繰り返す病気です。内耳のリンパ液が過剰(内リンパ水腫)になることが原因とされ、ストレスが誘因と考えられています。聴力検査や眼振検査によって診断されます。軽症の場合には生活習慣の改善が治療に有効です。しっかり水分を飲むことや塩分を控えること、適度な運動や睡眠リズムの修正、気分転換が有効です。中等度の場合には浸透圧性利尿薬を内服します。難聴が悪化する場合には副腎皮質ステロイドの内服や点滴を併用することもあります。
ある日、突然、前触れなく、ひどい回転性めまいで立てなくなります。数日間持続することもあり、救急搬送し入院することも多い疾患です。急性期のめまい症状に対しては安静にし、輸液や鎮静薬を使用することもあります。徐々に回転性めまいが落ち着いてくると、体を動かします。一側の半規管の機能低下があるので、健常な半規管の機能を高めるために前庭リハビリテーションが有効です。
飛行機に乗ったり、潜水したり急に浮上したりすると気圧や水圧の変化が内耳に影響を与えます。重い荷物を持ったり、くしゃみや息みが内耳の圧変化を生じて、内耳に流れる外リンパ液が中耳に流出することで発症します。回転性めまいや難聴が酷く、日常生活ができなくなることもあります。聴力検査や平衡機能検査に加えて、中耳の洗浄液中のCTPという内耳特異的タンパク質を検出することが診断に有用です。瘻孔が自然閉鎖することもありますが、急激な難聴の悪化や遷延するめまい症状に対しては内視鏡下内耳窓閉鎖手術を実施することがあります。
気になる症状がある場合は、早めの受診と適切な検査・治療が重要です。必要であれば、さらに詳しくご説明しますので、遠慮なくご相談ください。
顔面神経麻痺とは、顔の表情をつかさどる「顔面神経(第7脳神経)」に障害が生じることによって、顔の筋肉がうまく動かせなくなる病気です。顔面神経は、目や口の開閉、笑顔などの表情を作る筋肉を支配しているほか、味覚や涙・唾液の分泌、さらには聴覚にも関与しています。そのため、麻痺が起こると見た目の変化だけでなく、生活の質にも大きな影響を及ぼします。
顔面神経麻痺は大きく「中枢性麻痺」と「末梢性麻痺」に分類されます。中枢性麻痺は脳の中枢(脳幹や大脳)に原因があるもので、脳出血や脳梗塞、脳腫瘍などが主な原因です。この場合は神経内科や脳神経外科での専門的な治療が必要となります。一方、末梢性麻痺は顔面神経そのものに障害が生じるもので、耳鼻咽喉科が診断と治療を担当します。末梢性麻痺の多くは、ヘルペスウイルスの再活性化によって神経が炎症を起こすことが原因とされており、ストレスや疲労などが引き金になることがあります。
顔面神経麻痺の発症には、以下のような4つの主要なパターンがあります。
最も一般的なタイプで、朝起きたときに突然顔が動かなくなっていることに気づくケースが多く見られます。具体的には、目が閉じにくい、口から水が漏れる、笑顔が作れないなどの症状が現れます。代表的な疾患には「ベル麻痺」や「ハント症候群」があり、いずれもヘルペスウイルスによる神経の腫れと血流障害が原因とされています。また、脳卒中による麻痺も急性発症型に含まれ、他の神経症状(手足の麻痺、言語障害など)を伴う場合は、速やかな専門的治療が必要です。
交通事故などによる頭部の強打や、耳下腺腫瘍の摘出、中耳の手術、脳腫瘍の除去などの外科的処置によって、顔面神経が直接損傷されることで麻痺が生じることがあります。これらは明確な外的要因によるもので、術後の経過観察や神経再建の検討が必要となる場合もあります。
神経変性疾患(例:多発性硬化症)、膠原病(例:全身性エリテマトーデス)、耳下腺の悪性腫瘍、聴神経腫瘍などが原因で、時間をかけてゆっくりと麻痺が進行するタイプです。初期症状が軽いため見逃されやすく、専門的な診察と画像検査による早期発見が重要です。耳鼻咽喉科での継続的な診察が推奨されます。
胎児期の発生異常や、出産時の外的圧力によって顔面神経に障害が生じることで、出生時または成長過程で麻痺が明らかになるタイプです。症状の程度や範囲は個人差があり、小児科や小児神経科での専門的な診断と対応が求められます。
顔面神経麻痺では、顔の左右いずれかの表情筋が麻痺するため、以下のような症状が現れます。
また、顔面神経は表情筋以外にも、味覚(舌の前方2/3)、涙や唾液の分泌、聴覚(音の感度調整)にも関与しているため、以下のような付随症状が見られることもあります。
顔面神経麻痺の治療は、原因や症状の重症度によって異なりますが、一般的には副腎皮質ステロイド薬の内服や点滴治療が行われます。これらの薬剤は、神経の炎症を抑え、血流を改善することで回復を促します。
治療の開始時期は非常に重要であり、発症から1週間以内に治療を開始することで、予後が大きく改善するとされています。1週間を過ぎてからの治療開始では、回復が遅れたり、後遺症が残る可能性が高くなるため、早期受診が推奨されます。
回復には数週間から数か月を要することがあり、経過中には以下のような検査や治療が追加されることがあります。
顔面神経麻痺は、早期の診断と治療が回復の鍵となります。顔の動きに違和感を覚えた場合や、上記のような症状が現れた場合には、できるだけ早く耳鼻咽喉科や神経科を受診してください。必要に応じて、さらに詳しい検査や治療方針についてご説明いたしますので、どうぞ遠慮なくご相談ください。
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